纏(まとい) - 東京消防庁
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この纏を初めて使ったのは、大名火消だといわれていますが、定火消の消防屯所では、玄関敷台の右わきに、定紋をつけた銀箔地の纏を飾り、厳めしい火事装束に身を固めた ...
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このページは、新消防雑学事典二訂版(平成13年2月28日(財)東京連合防火協会発行)を引用しています。
最新の情報ではありませんので、あらかじめご了承ください。
纏のいわれ
町火消が、組の目印(シンボル)として用いたのが纏(まとい)です。
纏はもともと群雄割拠の戦国時代に、戦場で敵味方の目印として用いたもので、的率(まとい)あるいは馬印(うまじるし)と称していました。
江戸時代に入り太平の世が続くと、武家の的率は使われなくなり、これに代わって火消が火災現場で用いる標具となりました。
この纏を初めて使ったのは、大名火消だといわれていますが、定火消の消防屯所では、玄関敷台の右わきに、定紋をつけた銀箔地の纏を飾り、厳めしい火事装束に身を固めた侍たちが待機していたということです。
この纏が、火消にとってどれほど重要なものであったかは、天下に名高い加賀鳶の喧嘩の様子によって知ることができます。
享保3(1718)年12月3日、本郷の杉浦屋敷から火が出ましたが、加賀鳶の一番手がさっそく駆けつけて、これを消し止め、消し口の屋根に纏を立てました。
そこに新手の定火消、仙石勢が駆け上るや、加賀鳶の纏持ち以下を屋根から転げ落とし、自分の纏を立ててしまったのです。
落ちた拍子にまといが折れたことが加賀鳶の怒りを一層かりたて、彼らは大暴れに暴れて仙石の纏を追い落としてしまいました。
そのついでに、仙石方の臥煙(がえん)を一人殺してしまったことから騒ぎはますます大きくなり、両家だけの話し合いでは収まらず、老中を通じ将軍吉宗の耳にまで達してしまいました。
吉宗が名奉行大岡越前守忠相に事件を調査させた結果、仙石側の横車が事の起こりであることが判明し、仙石は厳しいお叱りを受けました。
町火消が誕生して間もなくの享保5(1720)年4月、大岡越前守は、町火消にも纏を持たせ士気の高揚を図りました。
もっとも、このころの纏は纏のぼりといわれた幟形式のもので、馬簾(ばれん)(纏にたれ下げた細長い飾りで48本ある)はなく、火災出場区域や火災現場心得などが書かれていました。
纏は、いろは48本に本所・深川の16本を合わせて64本ありました。
今日見られるような形の纏になったのは、享保15(1730)年のことで、当時纏の馬簾には、今日のような黒線は入っていませんでした(ただし、一般の町火消と区別するため、上野寛永寺に火災が起こった際に駆けつける「わ組」と「る組」の馬簾には1本、湯島聖堂に火災が起こった際に駆けつける「か組」の馬簾には2本の黒線が入っていました)。
纏の標識部を陀志(だし)と呼んでいますが、これらはそれぞれの組の土地に縁のあるものや、大名の紋所などをデザイン化したものが多く、「い組」に例をとると、芥子(けし)の実に枡を型取ったものであることから、芥子枡(消します)の纏と呼ばれています。
この名は、大岡越前守が付けたものという説もあります。
すべての纏の馬簾に、黒線が入れられるようになったのは、明治5(1872)年に町火消が消防組と改称されたときからで、受持区域を一定の区域に区切って線を入れていました。
当時は1本から6本までの黒線でした。
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